Photo Studio
最近、魂を揺すぶられるような展覧会に出会いました。
上田義彦という写真家をご存知でしょうか。
1990年〜2011年頃までのサントリーのウーロン茶の有名な広告写真を手掛けていた写真家、
といえばその透明感に満ちた世界を思い出す方もいらっしゃるかもしれません。
上田義彦が一番好きな写真家だという娘の果楓と一緒に、
葉山の海に面したところにある神奈川県立近代美術館まで行ってきました。
広い館内には、ノスタルジックでフォトジェニックな、圧倒的な大型プリントがあちこちに展示されていました。
その大きなプリントの間や壁の隅にはちょこんと飾られたモノクロ写真の小さな額たち。
それは家族の姿を記録した「at Home」というシリーズで、妻の霧島かれんさんと4人の子供、
ゾエ、ハンナたち・・を見つめながら上田さんは息をするように写真を撮っている。
妙に、この地味なモノクロ写真のシリーズが心に留まると思ったら、
そういえば、このシリーズの写真集を持っていたことを思い出しました。
有機的に配置され、混じり合って並ぶものすごい数の写真といろいろなシリーズ。
パティー・スミス、メープルソープ、トミー・リージョーンズ、北野武、大島渚ら大物たちのポートレート。
畏怖の念を感じながら自然に対峙した森のシリーズ。
写真がまだデジタルではなく今ほど手軽な存在ではなかった広告写真全盛期を、
カッコよく駆け抜けた上田さんの写真はその多くが大型カメラによるもので、
手軽ではないからこそ、圧倒的な画力で迫ってきます。
でも本質的には、写真を撮るということは実は大変地味な行為です。
自分の無意識に思いを向けてみたり、考える、ということ。
上田義彦さんは撮影時はあまり考えずに感じたままに撮り、撮ったあとにずっとずっと考えるそう。
写真に対する慈しみ、人の営みに対する温かで柔らかな視線、
サントリーのウーロン茶やBOSSのコーヒーに代表される飲み物や食べ物を通して感じる
毎日の人の営みが繋げるいのち。子供たちと過ごす毎日をモノクロで記録していったその人の息づかいが、
広告写真にまでも聞こえてくる気がするような、そんな写真展でした。
ああ写真家というのはこういうものだ、寝ても覚めても写真に溢れてる。
私たちを包むこの世の中に対する愛に溢れている、と強く思いました。
ああ私もその端くれとしてそんな熱量で毎日写真と向き合っていこう、
とたしかに心新たに思ったのでした。
『悲しみは忘却の彼方へ、微笑みは写真の中へ』上田義彦
(CAPLEVILLE) 2026年1月10日 12:14
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