Photo Studio
5月13日から25日まで開催されたカンヌ国際映画祭に今年も参加してきました。
青い空、紺碧の海とそれを囲む小高い丘。
コートダジュールという響きの通り最高級ホテルが海岸沿いに立ち並びますが、映画祭が始まった瞬間に街中ひたすら映画祭一色になるマジックな場所です。
わたしにとって1996年から数えて30回目となった今年は、日本映画の宝庫でした。コンペティション部門の『ルノワール』、ある視点部門には『遠い山なみの光』、監督週間部門には『国宝』と『みはらし世代』そしてカンヌ・プレミア他で『8番出口』と『恋愛裁判』。
わたしにも出発前から撮影の依頼が相次いで、いったいこの数の作品をどうやってこなすのか...と思いましたが、部門が違えど、日本の作品が同日に被らないようにとの配慮で入念にスケジュールが組まれました。
先陣を切った『遠い山なみの光』では広瀬すず、吉田羊、松下洸平、三浦友和、そして原作のカズオ・イシグロが登場。
フォトコール会場、レッドカーペットそして上映後のスタンディングオベーションを最前列の特別席で撮影ができるように映画祭のフォトオフィスと交渉を進めました。カメラマンは何百人もいて、全員がシャッターチャンスを狙いますが、とにかくベストポジションをもらうには、早い者勝ちではなく申請制なのです。
前年度までの成果を鑑みて許可がでるかが決まります。
ひとまずこちらは大成功!撮影したら即配信。
そのあとに続いた『国宝』は日本から渡辺謙、横浜流星、吉沢亮がカンヌ入りをしたので早朝にビーチで、そのあと丘の上まで駆け登り、カンヌの町並みを見下ろすショットのオフィシャル撮影をしました。
それぞれの俳優さんにひとりずつスタイリストがついて、大所帯の撮影でした。
中盤に上映された『ルノワール』は唯一のコンペ作品なので、緊張感が走るなかでの正式上映。
石田ひかりさんの着物姿と早川千絵監督の清々しい姿がすてきでした。
そしてミッドナイトスクリーニングの『8番出口』は、二宮和也と監督の川村元気が登場。
日本だったらきっと近づくこともできないであろう人に、カンヌだと肩肘張らずにご一緒できる気軽さがあります。
フォトコールのまえに「ニノ」がニックネームのスーパースターです〜と周りのカメラマンにささやいておいたところ、みんなちゃんと「Nino! Nino!」と口々に叫びながら撮影してくれて大いに盛り上がりました。
後日、二宮さんがご自分のtwitterに、「誰も知らないはずなのに、みんなからニノと呼ばれびっくりしました」と書いていたそう(!)。
日本では、フォコトール会場の写真や正式上映の写真が、作品ごとに大々と報道されていきました。
分刻みの、あまりに怒涛の日々だったので、目の前に広がっていたはずのコートダジュールの海をゆっくりと眺めることさえできませんでしたが、30年の集大成のような映画祭となりました。
どの撮影も、ただ求められたものを記録するだけではなく、会場間を移動する際の一コマや、隙間の時間に見せてくれる別の表情を捉えることに心がけました。
こっそりと捉えた写真もまた、写真を必要とするメディアの目にも留まり、いわゆる公式写真に交ってしっかりと掲載されました。
フォトグラファーとして新鮮な手応えも感じることのできた映画祭でした。(若)
(CAPLEVILLE) 2025年6月15日 19:42
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